【レビュー】無くなって気づいたソープディスペンサーの良さ
- 2022.09.08
- 家電 生活向上
- ささやかなライフハック, すぐ壊れる
アルコールとハンドソープ
最近はどこにいっても手ゆび消毒用のアルコールが置いてあります。いつになったら沈静化するかわからない社会不安の中、僕たちは律儀に手を消毒し続けています。
僕は一族レベルでお酒が飲めない呪いにかかっているので、そのたびに手が痒くなったり、荒れたり、憂き目を見ているわけですが、かといってやらないわけにはいかない。もちろんまずは自分がコロナにかからないように気をつける必要がありますので、かかさず手を痒くしているのですが、できれば家でくらいは違った方法でケアしたいものです。
アルコールの呪いにかかった人向けのノンアルの消毒液というものもあるようですが、やすやすとは手に入らないため(探せば普通に売っています)、僕はハンドソープでゴリゴリに洗うことでその対策としています。
厚生労働省は、「石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らせます。手洗いの後、さらに消毒液を使用する必要はありません。」とのたまっておられますので、僕はそれを愚直に信じ、実行しているわけですね。
1/10000という数字がはたしてどうなのかわかりません。もしも手の上に1億粒のコロナ菌がいたら、10000粒残るやんけ感染やんと思ってしまいますが、厚生労働省がこういうからには大丈夫なのでしょう。
ある日、仕事から帰ってきてくたくたの僕は、とんでもない事実に気づきました。「仮に掌の上にべったべたにコロナ菌がついているとして、ハンドソープを駆使して消毒に替えたとしても、未消毒の状態でハンドソープの上の押すところを押すのはどうなんだ?」と。
「ハンドソープの上の押すところを押す」とは、なにやら「野比のび太」みたいになっている気がしますが、正式な名前を残念ながら存じ上げないので仕方ありません。押したらハンドソープが出るあの機構のことです。
あの押すところを押すときは、手は消毒されていないわけだから、押すところはものすごく雑菌まみれなのではないか。下界で穢れ切った僕の手から移籍してきた雑菌で、とんでもないことになっているのではないか。それも毎日塗り重ねられるわけですから、これは完全に現代版蠱毒といっても差し支えない気がします。
ドアノブは?とお思いになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、僕もこれを書きながらそう思いました。ドアノブも蠱毒ですね。ただ、家の外なのでセーフとします。
ソープディスペンサーとの出会い
そこで、1年前のアマゾン・プライムセールで「安くなっているんだから何か買わないと」と取り憑かれたように商品ページを巡行していた僕の目に飛び込んできたのが、「ソープディスペンサー」でした。
説明するまでもないと思いますが、この出っぱっている部分の下に手を差し出すと泡と化した石鹸が放出される機械です。これは泡と化すタイプですが、泡と化さないタイプもあります。今はどちらかというと同じメカニズムでアルコールを放出するもののほうがよく目にするかもしれませんね。
よく知らないというと失礼かもしれませんが、とにかく衝動買いだったので、他と比較して安いのかもよくわからない、知らない中国メーカーのやつです。今まじまじと見て、はじめて「KEYNICE」というメーカーなのだと知りました。この手の細々とした、役割が明確な家電にありがちの現象です。
そんなわけで衝動的に導入したソープディスペンサーだったのですが、使ってみると特に大きな感動があるわけでもなく、予想通りの使用感で、押すところを押す必要がなくなったのはよかったなあという小学生みたいな感想を抱いていました。
ちなみにこれには、microUSBで充電したり、謎の葉っぱマークがしばらく光ったりともろもろの機能が備わっていたのですが、もうすでに故障しているため割愛します。
「KEYNICE」が壊れた
と書くと嘘になります。その当時、僕はこのソープディスペンサーのメーカーが「KEYNICE」であるということを知らなかったため、「ソープディスペンサーが壊れた」というのが正しいですね。いや、「ソープディスペンサー」という映画のタイトルみたいな名称も忘却のかなたに忘れ去っていたことを考えると、「なんか壊れた」が正しいのかもしれません。
最初は「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!」といいながら元気に泡を吐き出していた「KEYNICE」だったのですが、1年くらい使用したあたりで「ヴヴ…」くらいしか泡を出さなくなりました。
「電池が切れたのかなあ?」と思い、充電したのがとどめだったみたいで、microUSB端子にケーブルを挿したところ、ヴとも言わなくなりました。
1年かあとは思いましたが、そんなにショックもありませんでした。よく知らないメーカーだし、なくなってすぐにどうこうなるわけでもない。水回りでたいした防水処理もない状態で、むしろ1年もよく戦ってくれたというのが本音だったかもしれません。
押すところを押すハンドソープに戻るも……
そんなこんなで「KEYNICE」が昇天したことにより、押すところを押すハンドソープに戻すことを余儀なくされた僕だったのですが、その次の日から問題が発生しました。
それは1年間の「KEYNICE」生活により、僕の中からハンドソープの「押すところを押す」習慣が完全に消え去ってしまっていたことでした。
仕事から帰ってきてゾンビみたいになった僕は、まず洗面台に向かいます。ハンドソープで手を洗うためです。手を水で湿らしたあと、ハンドソープの下に手をかざします。何も出ません。「そうだ、KEYNICEはもう壊れたんだ……」僕は現実を思い出します。もちろん、「KEYNICE」という名前は知らなかったので、便宜的にそう思ったことにしています。
目の前にあるのは蠱毒。疲れ果て切った僕は舌打ちをし、イライラしながら押すところを押します。
3日くらいその生活を続けました。いつかは慣れるかなとも思ったのですが、毎回イライラしました。これはダメなやつやと思いました。僕は一刻も早く手を洗い、ベッドに滑り込みたいのです。はやく仕事を辞めたい。職場でも常にイライラしているのに、家に帰ってきてまでもイライラするのは精神上よくない。たしかにいつかは慣れるかもしれませんが、これを繰り返していたら、ほどなく心が壊れるだろうなと思いました。
そんなわけで、飴細工のような僕の心を壊さないためにも、新しいソープディスペンサーを買うことが急務になりました。
知っているメーカーのものを買う
「KEYNICE」のソープディスペンサーは最高でした。押すところを押さないで、手をかざすだけでハンドソープが出る。それがこんなにも便利だと教えてくれました。唯一欠点と言えば、それが「KEYNICE」だったということにつきます。ソープディスペンサーは便利。でも「KEYNICE」はダメ。
いや、はやめに壊れることで、ソープディスペンサーの便利さを意識上に引き上げてくれたということもできるのかも知れません。「KEYNICE」が5年、10年と使えてしまっていたら、僕の中で「手をかざすだけで石鹸が出る」ことは当たり前のままだったのかもしれない。壊れることがなかったら、こうして記事に書こうとも思わなかったでしょう。そういう意味では「壊れる」という最後の仕事をしたとも言えなくもない。そこまで考えて、こいつが唐突に壊れることで、数日間僕はイライラしたことを思い出しました。やはり「KEYNICE」はダメです。
「今回は間違いのないソープディスペンサーを買おう」と意気込んで、その翌日家に届いていたのがこの「キレイキレイ」でした。
何を隠そう、「KEYNICE」の中に入っていたハンドソープも、僕が今はなきヤックスで買った「キレイキレイ」なのです。その「キレイキレイ」の名前を冠したソープディスペンサーなわけで、言わば本家本元にあたるわけで、これはもう確かなものであるに決まっています。
「キレイキレイ」(つまりライオン)は石鹸でこそ有名ではあれ、ソープディスペンサーとしての実績は皆無なのでは……? ということに、このときの僕は気づいていません。例えるなら、UNIQLOが販売した動物の餌を愛犬にあげているイメージ。繊維などが混入している可能性を微塵も考慮していません。
キレイキレイ 薬用泡ハンドソープ専用オートディスペンサー
これが正式名称らしいですね。公式サイトで調べました。信じられないほど長い上に、もっと売るための名前を考えればいいのにとも思います。たとえば「あわはき君」みたいな。
Amazonで購入したため、商品ページの写真からはまったくサイズ感がわからず、「大きすぎて入らなかったらどうしよう」と心配だったのですが、箱から出すと思ったよりもコンパクトで安心しました。
こういったものに質感を求める必要性があるかはわかりませんが、シンプルでいいんじゃないかと思います。少なくとも主張しないデザインで、邪魔にならない。「KEYNICE」は下3分の1くらいの「貯石鹸タンク」みたいな部分がやわらかいペットボトルみたいな質感で、なんか嫌でした。
素直に嬉しかったのが付属品ですね。動かすのに必要な単三電池3本はもちろん、詰め替え用の「キレイキレイ」まで同梱されていました。さすが本家本元だけあります、他のソープディスペンサーには真似できない芸当です。
とはいえ、「KEYNICE」のほうにもまだまだ戦えるだけのハンドソープが入っていましたので、貧乏性の僕は、ひとまずそれを「キレイキレイ」に移し替えることにしました。というか、こういうシチュエーションであれば、移し替えるのが人間として普通だと思います。
カーペットに少し垂れましたが、垂れたのは醤油でもコーヒーでもなく、石鹸です。綺麗か汚いかで言えば綺麗側の存在です。なにせ「キレイキレイ」なのですから。これしきのことでは僕は動じません。
石鹸を入れ終わると、電池を入れる番になります。この順番は大事です。なぜかというと、ソープディスペンサーの場合、手が偶然前を通りかかっただけで「ヴヴヴヴヴヴヴ!!」となるからです。できる限り、電池を入れたりオンにしたりするのは最後にしたほうがいい。これは「KEYNICE」充電のときに何度かやらかしていて、床に大量の石鹸が無慈悲にもばら撒かれることとなりました。いや、石鹸は綺麗だから別に汚れるわけではないんですけど……。
この電池を入れる裏蓋がかなりガバガバで、引っ張ったら「スルッ」と抜けます。ちゃちなリモコンですら「カチッ」ていう音がなるのに、水場周りでこれは大丈夫か……? と不安になります。
(「キレイキレイ」は石鹸としての信頼はあっても、ソープディスペンサーとしての信頼はない)
電池を入れて、電源ボタンを押すとどうやら待機モードになるらしい。待機モード中は5秒に1回LEDが点滅するらしく、これが2回になったら電池が切れかけているということなので、よろしくと説明書に書いてありました。
なにはともあれ、これで二度と蟲毒に触れることなく、心安らかな手洗い生活が送れるようになりました。よかったよかった。
使ってみて数日経った感想
しばらく「押すところを押す」タイプのハンドソープを使っていたので、ひさびさに手をかざして「ヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!」と泡が吐き出されたときの悦びは、筆舌に尽くしがたいものがありました。
やはり、ソープディスペンサーはいいですね。生活の質が確実に上がっている気がします。
なくなるとイライラして、久々に使ったときのこの愉悦は、完全にシャブのそれと同じだと思いました。いや、僕はシャブについてはあまり詳しくは知りませんが、おそらくこんな感じなんだろうなあと思っているということです。
今のところは毎日泡を吐き続けていますが、気になるところが3つくらいあります。
一つ目が、「電池の持ち」です。
電源ボタンを入れると待機モードになり、その状態だと泡が出るというのがこの「キレイキレイ」なのですが、「待機モード」があるということはあまり使わないときは電源オフにしておけってコト……?
使う前に再度待機モードにするために電源ボタンを押すようじゃ、押すところを押すハンドソープと変わらないじゃんと思ってしまいます。待機モードでも、バッテリーが数か月もってくれればいいんですけど、まだそこまで使用してはいないので確認はとれていません。
バッテリーもちのために電源オフを頻繁に使うということであれば、僕のソープディスペンサーに期待するところから少し離れてしまいます。少し様子見です。
また、電池をエネループにするべきかも悩んでいます。もし防水の面で不安なのであれば、中のエネループ(まあまあ高い)が一緒に駄目になる可能性もありそうなので、悩みどころです。
二つ目が、「裏蓋のブカブカ具合」です。
裏蓋が「カチッ」ではなく、「スルッ」という感じだとはさっきお話しした通りなのですが、やはり水回りであるため、直接水が触れないにしても、湿気程度はどうにかできる防水機能があってほしいというのが本音です。
その点、「スルッ」では心もとなすぎます。ここから錆びて壊れそう、特に下の蓋が受ける形になっているので、一度侵入を許した水が外に出て行かない構造になっているのも不安でしかない。
三つ目が、「泡が泡じゃなくなってきた」です。
最初はシフォンケーキみたいな泡を吐き出していた「キレイキレイ」なのですが、今はチョコレートブラウニーみたいな泡を出すようになっています。
まだ使い始めて間もないというのに、この泡の状態を見ると、じきに泡は泡でなくなり、最終的にはよだれを垂らすような状態になるのでは? と勘ぐってしまいます。
まあ……、ハンドソープが泡である必要はそれほど感じていないので、手が洗えるのであれば僕はそれでもOKだと思っています。
四つ目が、「残量がわからない」です。
書いている途中で思いつきました。よく考えたら、これ、残量がわからないですね。「KEYNICE」は下のベコベコする石鹸タンクのような場所が透けてみえていたので、残り残量が一目瞭然でしたが、これだとあとどれくらい残っているのか全く分かりません。
持ち上げてみたときの重さで判断するのは、それこそ日銀の人が百万円の札束を持って、「一枚多い、一枚少ない」を見抜く職人技に匹敵する芸当な気がします。どうやって判断するんだろう……。
まとめ
なんだかんだとソープディスペンサーについてめっちゃ長く書いてきましたが、ソープディスペンサーは些細なものでありながら、確実に生活の質を上げてくれるものであると断言できます。
その質の上がり具合は、上がったことには気づかない程度ですが、なくなると「上がってたんだなあ」とイライラしますので、確実に上がっているとは言えると思います。
総じて、一度こちらの世界に来てしまうと、もう二度と元の世界に戻れない、心臓の弁のようなものがソープディスペンサーなのかなあと僕は思いました。
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